「ファンシーラットにヴィーガンフードを与えると腫瘍発生率を抑えられる」という話を聞いたことはないでしょうか?ファンシーラットは腫瘍発生率が高いペットなので、もしこの話が本当なのであれば、ぜひ食事に取り入れたいと考える方も多いでしょう。
今回は、本当にヴィーガンフードで腫瘍発生率を抑えられるのか?という疑問を、論文2本の内容を元に解説していきます。
※翻訳の都合上「がん」と「腫瘍」という単語がどちらも使われていますが、この記事内では概ね同じものとして考えてください。
植物ステロールが腫瘍発生予防に効く
まず紹介するのは”Protective Effect of Plant Sterols against Chemically Induced Colon Tumors in Rats”(ラットにおける化学物質誘発大腸腫瘍に対する植物ステロールの予防効果)という論文です。
この論文によると、実験ではラットを4つのグループに分けました。
- 普通の餌とただの生理食塩水を与えたグループ
- 普通の餌と植物ステロール入りの生理食塩水を与えたグループ
- 普通の餌と発がん物質入りの生理食塩水を与えたグループ
- 普通の餌と発がん物質・植物ステロールの両方が入った生理食塩水を与えたグループ
そして28週間飼育した後、腫瘍の発生状況を調べました。
その結果のがん発生率が以下です。
与えた食事 | がん(腫瘍)の発生率 |
---|---|
①普通の餌とただの生理食塩水 | 未発生 |
②普通の餌と植物ステロール | 未発生 |
③普通の餌と発がん物質 | 54% |
④普通の餌と発がん物質・植物ステロール | 33% |
③より④のグループの方が腫瘍発生率が低いことから、植物ステロールが腫瘍の発生を予防していると考えられます。
なお、植物ステロールが多く含まれているとされる食品は以下です。
とうもろこし・アボカド・チョコレート・貝類・シード類など
このなかでファンシーラットに与えられるのは、とうもろこしとシード類です。
副食として、コーンやヒマワリの種・かぼちゃの種などを適度に与えるとよいでしょう。
コーン・シード類は主食であるペレットの原材料としても入っているので、副食でそこまでたくさん与えなくても大丈夫です◎
大豆食品が腫瘍発生率を30%減少
次に紹介するのは”Soybean diet lowers breast tumor incidence in irradiated rats”(大豆食品は放射線照射したラットの乳がん発生率を低下させる)という論文です。
こちらの実験では、ラットを3つのグループに分けました。
- 普通の餌(プロテアーゼ阻害剤が少し入っている) を与えたグループ
- カゼイン入り餌(プロテアーゼ阻害剤なし) を与えたグループ
- 大豆入り餌(プロテアーゼ阻害剤が多く入っている)を与えたグループ
また、それぞれのグループをさらに2つに分け、片方にはX線を照射して乳がんを誘発させました。
結果、X線を照射しなかったラットたちには、ほとんど乳がんが発生しませんでした。
一方、X線を照射してがんを誘発させたラットたちの乳がん発生率が以下です。
与えた食事 | がんの発生率 |
---|---|
①普通の餌(プロテアーゼ阻害剤が少し入っている) | 70% |
②カゼイン入り餌(プロテアーゼ阻害剤なし) | 74% |
③大豆入り餌(プロテアーゼ阻害剤が多く入っている) | 44% |
つまり、がんが発生しやすい環境にいるラットであっても、大豆食品を摂取することでその摂取量に合わせて、ある程度~かなり発生を抑えられると考えられます。
なお、③で与えているのは正確には「raw soybean diet(生の大豆入り食餌)」です。
生大豆はこれまで「毒性があったり消化に悪かったりするので、与えるなら必ず茹でてから」と言われていましたが…?
ペットのファンシーラットに生大豆を与えるのはリスクが高いので、念のため今後も控えた方がよさそうです。
与えるとすれば、原材料に「大豆粉」や「大豆ミール」が入っているペレットなどでよいかと思われます。
以下の記事では、メジャーなフードの原材料をそれぞれ紹介しています。大豆が含まれているフードを探したい方は、ぜひ参考にしてください✨
ファンシーラットの腫瘍予防にヴィーガンフードや野菜を与えよう
上記2つの論文によると、少しの量の植物ステロールや大豆を与えただけでも、腫瘍発生率は変化しています。
つまり、毎日ヴィーガンフードを与えるのが難しい場合でも、副食として与えるだけで腫瘍予防の効果が出るということです。
ファンシーラットは腫瘍ができやすく、また体が小さいため手術代も高額になってしまいます。ラット・飼い主両方のためにも、できる範囲で腫瘍発生予防効果のあるものを与えるとよいでしょう。
栄養バランスが崩れるとそれはそれで病気になってしまうので、バランスを考えて副食を与えましょう!
また現在、ファンシーラットフードのなかでヴィーガンフードとして有名なのはセレクティブです。
偶然だと思いますが、我が家の歴代ファンシーラット9匹はセレクティブをメインで食べていて、1匹に小さな腫瘍が1つだけしかできたことがありません。
味も人気なので、今後もリピしようと思います!
腫瘍予防を心がけた食生活で、よいねずみぐらしを送ってください!
参考論文
“Protective Effect of Plant Sterols against Chemically Induced Colon Tumors in Rats” Robert F. Raicht; Bertram I. Cohen; Eugene P. Fazzini; Amar N. Sarwal; Makoto Takahashi
“Soybean diet lowers breast tumor incidence in irradiated rats” W Troll, R Wiesner, C J Shellabarger, S Holtzman, J P Stone
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