赤色3号(エリスロシン)は、鮮やかな赤色を付与するために使用されている着色料です。赤色3号に発癌性があるとのニュースを見て、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、このニュースに関係している、1987年に発表された論文 “Chronic toxicity and carcinogenicity of erythrosine (FD & C Red No. 3) in rats” (和訳:ラットにおけるFD&C赤色3号の生涯毒性/発癌性試験)をもとに、ラットに焦点を当てて赤色3号の研究結果を分かりやすく解説します。(以下、この記事では「本論文」と記載)

ラットの赤色3号生涯毒性/発癌性試験
早速、本論文内で行われている研究について解説していきます。
この研究は、赤色3号の長期摂取がラットの健康に与える影響を調査し、特に甲状腺への発癌性の可能性を評価することを目的としています。

なお、この論文の「長期」とは生涯(最長30ヶ月)にわたっての期間です
実験では、ラットを以下の5つのグループに分けて、餌に赤色3号を投与しました。
グループ | 飼料中の赤色3号割合 | 赤色3号摂取量 (当ブログ推測、ラットの体重を1kgとして仮定) |
---|---|---|
対照群 | 0.0% | 0mg |
低濃度群 | 0.1% | 20mg |
中濃度群 | 0.5% | 100mg |
高濃度群 | 1.0% | 200mg |
最高濃度群 | 4.0% | 800mg |
それぞれのグループで、長期間の摂取による健康への影響、特に甲状腺組織を重点的に観察し、腫瘍の発生頻度や細胞の異常を記録しました。
実験の結果は以下の通りです。
グループ | 観察結果 |
---|---|
高濃度群(1.0%) | 甲状腺腫瘍の発生が確認される |
最高濃度群(4.0%) | グループのなかで、甲状腺腫瘍の発生が最も多く確認される。 甲状腺細胞の異常増殖が著しく、腫瘍形成のリスクが高い |
高濃度の赤色3号を摂取したラットの甲状腺は、腫瘍の発生率が高いことが確認されました。また、腫瘍が発生しなかった場合でも、甲状腺細胞に異常な増殖が見られることがありました。
一方で、餌に赤色3号を追加していない対照群では、腫瘍の発生が極めて低く、自然発生率の範囲に収まっているようです。
低濃度群については具体的な発生率の記載はありませんが、腫瘍発生が顕著であるとの報告はありません。
赤色3号の致死量や安全限界値
赤色3号のLD50(半数致死量)は、実験動物の場合、体重1kgあたり約2g(2000mg)とされています。そのため、人間における1日摂取許容量も体重1kgあたり「0~0.1mg」とされており、体重50kgの成人では1日最大5mgほどの摂取が可能です。
4.0%の赤色3号を与えられているラットは、体重によっては生涯にわたり、毎日半致死量のほぼ半分の量を食べ続けているということになります。
なお、本論文では赤色3号のラットにおける安全限界値が以下のように確立されています。
メスラット | オスラット |
---|---|
1.0%(641mg/kg/日) | 0.5%(251mg/kg/日) |
この%は飼料中の赤色3号の濃度(割合)を示しており、この量を超えない限りは健康に悪影響が出ない摂取量ということです。
また、別の論文ではマウスと赤色3号の安全限界値についても記されています。
メスマウス | オスマウス |
---|---|
1.0% (1834mg/kg/日) | 3.0% (平均摂取量 4759mg/kg/日) |



オスマウスの赤色3号耐性がすごい
ラット甲状腺の特性と赤色3号の影響
ラットの甲状腺は、ヨウ素の代謝やホルモン分泌の仕組みが人間とは異なり、特定の化学物質に対して非常に敏感です。
本論文では赤色3号がラットの甲状腺刺激ホルモンの分泌を増加させ、結果として甲状腺細胞の過形成や腫瘍の形成を促進することが示唆されていますが、この反応はラット特有のもので、人間では同じ影響が起こる可能性は低いとされています。



実際にオスラットとオスマウスでもかなりの差があるため、ラットのデータをそのまま人間に当てはめて考えることはナンセンスですね
デラニー条項について
アメリカの食品添加物に関する法律には、「デラニー条項」という規定があります。
この条項は、食品添加物や着色料が動物または人間に発癌性を引き起こすことが判明した場合、アメリカ食品医薬品局(FDA)がその認可を禁止するというものです。



一見、健康を守るための良いルールに思えますが、この条項は科学的な現実を無視する側面もあります



例えば、塩など自然界に存在する物質でも、高濃度で摂取すれば胃癌の原因になり得ます
このような極端な基準により、実際には健康リスクが低い食品添加物が不必要に禁止されることも少なくありません。
赤色3号の規制も、このデラニー条項に基づくものです。
FDAはラットの実験で甲状腺腫瘍が確認されたことを根拠に、赤色3号の食品および経口医薬品での使用認可を取り消す方針を発表しました。しかし、科学者の間ではラットの発癌性データをそのまま人間に適用することへの妥当性が議論されています。
そのため、「アメリカで使用禁止になったってことは、危険なのでは!?」と一概に怯える必要はありません。
通常の食生活において赤色3号の摂取量が健康に影響を及ぼすリスクは非常に低いと考えられるため、科学的根拠に基づいた情報をもとに、適切に食品を選択しましょう。


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